クレイトン・クリステンセン 玉田 俊平太 伊豆原 弓
翔泳社
売り上げランキング: 441
今の会社に入社する前に読んだ本だったが,年末の暇な時間を利用して再読してみた。
そしてきちんとノートにもまとめておいた。(Evernote おすすめです)
会社に入る前の自分の感想を読む限り,かなり他人事であったのは間違いない。
今はどうか。もう自分の仕事そのものであると思う。
一応巨大企業に属する人間として,来年からの自分のスタンスを
示すためにもちょっと長文で感想を書いておきたい。
再読して良く認識できたのは,「大企業がこのジレンマに気付いて大企業自らが
持続的技術の市場を保ちながらも破壊的技術に対応するためにローエンドな商品も
並行して出していくことの無意味さ」だ。しかも同じマーケティングスキルを使って。
著者も述べているように,破壊的技術を大企業が乗り越えるには技術的挑戦が
必要なのではなくマーケティング的挑戦こそが必要なのである。
大企業が破壊的技術に対応し,自ら挑戦していくためには
以下の3つのことを行うのがいいと個人的には思っている。
1つ目は,既存の輝かしいブランドを捨てて新たに確立すること。
ハイエンドとローエンドを同じブランドで展開すれば飽和状態の顧客はローエンドに
飛びつく。その状態で破壊的技術を乗り越えてもその後にまっているのは
輝かしいブランド=ローエンドというレッテルである。これは意図していないはずだ。
ハイエンドブランドはそれはそれとして持続的技術として育てることも有効だろう。
2つ目は,新しい資源とプロセス,価値基準を持った環境を用意すること。
同じ組織の中でハイエンドのために頑張っている人間と,ローエンドのために
頑張っている人間が同居していること,これがいい環境と言えるだろうか。
例えばハイエンド向けエンジニアは自分たちの仕事に誇りを持っており,
なぜ収益性の低そうなローエンドに手を出しているか納得がいかないことも多い。
また同じプライスチャートにハイエンドとローエンドを同じように描くことも
違和感がある。(少なくとも私はそう思う。上級マネジメントは一覧性を重んじるので
そうだと思わないがこれを基に戦略を立てているとしたら同じプロセスと基準で
判断していることになりハイエンドも間違った判断をするのではないか,と懐疑的になる。)
価値基準が異なるのに,今までと同じ物差しと見方で判断していると
正しく破壊的技術を理解しているとは言いがたい。
これを解決するには組織内で部隊を完全に切り離して開発・販売するか,スピンオフして
別会社を設立するか,だろう。重要なのは開発部隊だけでなく,マーケティング含めた
販売手法・チャネルも切り離すことだと思う。
3つ目は,破壊的技術を用いた商品導入の高速化だ。
ハイエンド商品は多くの新機能,過去商品との統一性,ブランドイメージなど
開発・導入を高速化する障壁が少なくとも存在する。これを無理矢理
高速化すると,市場はさらに飽和状態となり売れなくなり,商品の品質は低下し,
組織内の担当者は疲弊していく。今の携帯電話業界がそれに違い。
一方,ローエンドにはまだそこにはそれを明確に求める顧客や市場が存在しない。
それは同時に,過去のしがらみを気にせず市場の反応に臆することなく
ある種の試みを含んだ商品導入を行えるというメリットでもあり得る。
だからこそ先駆者が絶対的に有利なのであり,多くのローエンド商品を試し
見えない市場を具現化することで自ら市場を作り出すことができるはずだと思っている。
大企業は資源が豊富なのだから,プロトタイプ的に市場に商品を出すのは容易のはずだ。
しかもローエンドである,とにかく多くの商品を高速に出す。
だたし2つ目と重複するがこの意思決定をハイエンドも作る同一組織が行ってはいけない。
既存の持続的技術の市場を自ら食い潰してしまうと思い,大胆になれないからだ。
この世界市場の落ち込みを逆に利用してくるのが新興企業だろう。
大企業はこういう場合に得てして選択と集中に走る。
やっぱり最後は小回りがきく組織であり,ポリシーを自ら構築できる組織がいいと思う。
大企業も元はと言えばベンチャー。まだまだやれることはたくさんあるのだ。